仔犬の飼育
はじめに新しい家族の一員となった仔犬は、まだ赤ちゃんのため、環境の変化や移動に弱く、ストレスなど予期しないことで体調を崩すことが多い、とてもデリケートな状態です。この項目では、ご家庭にお連れいただいてから、約1ヶ月間の飼育において注意していただきたいことをご紹介しています。犬ちゃんを初めて飼われる方も、飼育経験者の方も、ご家族全員でご一読いただき、実践してくださるようお願いします。
記載されていること、またそれ以外のことでも、よく解らないことや質問などがあれば、お気軽にご相談ください。

仔犬のお家を作ろう
- 仔犬を我が家に迎えたら、最初に、仔犬が休んだり、眠ったりするための専用のスペースを用意します。環境が変化したばかりの仔犬は、緊張しており、とても疲れやすく、体調を崩しやすくなっているので、サークルなどの落ち着ける場所を作ることで、仔犬の疲労を和らげることができるからです。
- リビングルームなど、家族が集まる部屋に設けると、仔犬の様子が観察できると共に仔犬も家族と一緒にいられることで安心して過ごせます。
- また、お子さまがいる家庭では、仔犬に触れたり、構い過ぎてしまい、仔犬が落ち着いたり、寝付くことができないことが多いので、サークルでの生活が必須となります。
- ベットはエアコンや冬の冷気から仔犬を守るために、屋根のあるタイプのものか、上部に屋根を作ってあげます。仔犬は体温調節が上手くできません。秋-冬はペットヒーターを使って、寒くならないように、十分注意してください。
- サークルは、直射日光が当たらず、夏は涼しく、冬は暖かく、また、清潔な状態が保てるように、掃除のしやすい場所を選びます。
- サークルを設置する場所を決め、床を消毒します。 普通にお掃除をした後、消毒薬を拭きかけて、雑巾などで乾拭きをします。
- サークルや敷物など仔犬が使うものも消毒します。
- サークルの中には、ベット・トイレ・給水器を配置し、食事を摂る場所を準備します。
仔犬の生活
- 仔犬にとって、一番大切なのは、暖かくしてよく眠ることです。ご家庭に来て12週間は、静かでやさしい環境を作り疲れさせないように注意します。
- 仔犬が眠っているときは、起こしたりしないでそのまま休ませます。
- 仔犬の自由に任せて遊ばせます。興奮させないように注意します。
- 必要以上に遊び相手になってしまうと、仔犬が興奮して運動会のようになってしまいます。体力以上に遊ばせると、後で疲れが出てきて、食欲不振や消化不良・下痢・発熱などの原因となります。
- サークルの外で遊ばせる時間は、1回につき10-15分程度で、1日2-3回を目安にします。※サークルの外で遊ばせるときは、その前に、遊び場所を消毒します。消毒方法は、床に消毒薬を拭きかけ、雑巾などで乾拭きをします
- 新しい環境の中で、仔犬は強いストレスにさらされています。そっと休ませる優しさも必要です。
- 10日間を目安に、新しい家庭の環境に慣らしていき、十分順応したら、少しずつ遊ぶ時間・回数を増やしていきます。
仔犬の睡眠
- 仔犬の頃は、1日の18時間以上を寝て過ごします。十分な睡眠が摂れていないと、神経質になり、体調を崩す原因となります。
- 起きている時間が多いようでしたら、飼育場所など、環境を見直してあげましょう。
仔犬の体温
- 仔犬は人よりも体温が高く、37.5℃-38.5℃が平均体温です。
- この体温は、直腸(肛門)に体温計を挿入して計る体温です。ご家庭で体温を測るときは、後ろ足の内腿に体温計を挟んで検温し、上記の体温より0.5℃ほど低い温度であれば、平熱です。
生活環境への注意
消毒
- さまざまな病気から仔犬を守るためには、清潔な環境で飼育することがとても大切です。サークルやその中のベッドやトイレをはじめ、仔犬が歩き回るスペースは、毎日の消毒がかかせません。
- 十分な消毒・殺菌効果を得るためには、「動物用医薬品」の消毒薬を使用する必要があります。ワクチン接種が終わって、仔犬が免疫を獲得するまでは、「動物用医薬品」の消毒薬を使用してください。(当動物病院にて処方しています)
手洗いの励行
- ペットと人との間には、「人畜共通疾患」と言って、ペットから人に、人からペットに移る病気があります。また、外出時に衣類や体にペットに有害な雑菌やウィルスを人が持ち込んで来る危険があります。
- 外出先から家に帰ったとき、仔犬に触る前、触った後は必ず石鹸での手洗いを励行してください。
- 特に、他の犬を触った後、他のペットの排泄物を触ったり近づいた後は、「動物用医薬品」の消毒薬で消毒してください。
気候・寒暖差への注意
- 仔犬の頃は、自分で体温が上手く調整できません。そのため、気温の変化に弱く、すぐに体調を崩してしまいます。仔犬にとって快適な環境は、気温が24℃26℃、湿度が50%程度なので、季節に応じて上手に調節します。
- 冬期は、ベットにペットヒーターを入れて保温します。この時、ヒーターによって体が熱くなり過ぎないように、涼める場所も作っておきます。
- また、夏期は、エアコンからの冷風が直接仔犬の体に当たらないように注意して、涼しい環境を作ってあげましょう。
- 冷暖房機を使うと、どうしても室内は乾燥傾向になりますが、乾燥した環境は、ウィルスが活性化(繁殖・感染力が強い状態)します。加湿器などを使って、湿度を50%程度に保ってください。
- 仔犬の快適な環境=室温:24-26℃、湿度:約50%
仔犬のための道具
仔犬を迎える為の便利な家具
- 清潔に使えること、犬ちゃんの体格にあっていることを考慮して選びましょう。
- サークル・ケージ
- 仔犬が寝たり、食事をしたり、トイレをするのに充分なスペースのあるものを選びましょう。
- 防水タイプのシート
- サークルを設置する時に下に敷きます。床を汚さないよう防水タイプを選びましょう。
- ペットシーツ
- トイレをしたら、こまめに取り換えます。レギュラーサイズ(30×45cm)でOK。
- ベット
- 冷気から仔犬を守るため屋根付きのものか、屋根を作ってあげましょう。
- ペットヒーター
- 冬期に仔犬を飼育する時の必需品、お腹が温められる位のサイズを選びます。
- バスタオル
- ベットの敷物に使います。新品ではなくて、家族の臭いのする古いものを使います。
食器(食事用)
- 接触性アレルギー予防のため、陶器や磁器、ステンレスなど無機質の素材のものを選びます。
- 食器(お水用)
- 食事用と同じ無機質素材を選びます。食器が動かないように、多少重さのあるものを選びましょう。
- 給水器(吊下げ式)
- いつでもきれいなお水を与えることができます。
- スプーン・フォーク・計量カップ
- 缶詰フードをほぐしたり、ドライフードの計量などに使います。犬ちゃん専用のものを用意してあげましょう。
- おもちゃ(ロープタイプ)
- ロープ状のおもちゃは、仔犬がそれを咬むことで歯磨きの効果や歯肉を強化する効果があります。
- おもちゃ(鳴り物タイプ)
- 音の出るタイプのおもちゃは、仔犬の関心を引くので、呼び寄せたり、トレーニングの時に使えて便利です。
その他の便利な道具
- 消臭剤
- 室内にこもりやすいペット臭や排泄物の臭いの解消に。仔犬が舐めたり、食べても安全なものを選びましょう。
- 空気清浄機
- 人が気になるペットの臭い、ペットが気になるお部屋の臭いの両方を解決します。
- 加湿機
- 室温とあわせて湿度の管理もとても重要です。仔犬用に一台準備してあげて下さい。
- ピンブラシ
- オーバーコート(上毛)の抜け毛を除去したり体毛についたホコリを取ったりします。皮膚に刺激を与える効果があります。
- スリッカー
- アンダーコート(下毛)の抜け毛を除去したり、毛並みを整えたりするためのブラシです。
- コーム
- 毛並みを整えたり、絡まった毛をほぐす時に使います。ステンレス製で柄の部分が丈夫なものを選びます。
- のみ取りコーム
- のみを取り除くためだけでなく、顔の被毛を整えたりするためにも使います。ステンレス製のものを選びます。
- 獣毛ブラシ
- 短毛種の犬ちゃんのブラッシングに使います。豚毛など動物の毛でできているものを選びましょう。
- つめ切り
- 室内で飼育していると、つめが伸びすぎて歩きにくくなります。2週間に1度の割合で、カットしてあげて下さい。
- 首 輪
- お散歩に出る前から着けておいて首輪に慣らしておきます。仔犬の頃はどんどん大きくなるので長さ調整のしやすいタイプを選んでおきましょう。
- リード
- 首輪と同様で、お散歩に出る前から家の中で着けて慣らしておきます。首輪と共に仔犬に負担の少ない軽量タイプを選びます。
- キャリー
- 外出時には、落下や逃走事故防止のため、必ずキャリーに入れておきます。持ち手やドアが頑丈なものを選びます。
仔犬の食事
- 幼齢期の食事は、その成長を支えていることや嗜好性を決めると言う点で、とても大切です。生後4ヶ月までは、決められた回数を決めた時間に食事を与えます。
- また、離乳直後の仔犬は、硬いものや冷たいものを食べることができませんし、環境の変化で、胃腸の調子を崩しやすくなっているので、食事は毎回、軟らかく、人肌(38℃)程度に温めてから与えます。
- ステンレスの食器(又はボウル)にパピースターター(乳液状)と缶詰をそれぞれ入れる。食器を湯せんにかけてフードを人肌(38℃)程度まで温める。フードをよく混ぜ合わせ、温かいうちに仔犬に与えます。
- すこし慣れてきたら、ステンレスの食器(又はボウル)にベッツプラン パピーケア(ドライフード)を入れ、お湯に浸して710分程度置き、柔らかくなったフードをフォークなどで潰します。高栄養(缶詰)を追加し、湯せんにかけて人肌(38℃)程度まで温める。フードをよく混ぜ合わせ、温かいうちに仔犬に与えます。
- さらに次の段階では、ステンレス製の食器(又はボウル)にベッツプラン パピーケア(ドライフード)を入れ、お湯に浸して柔らかくします。フォークなどで潰してから仔犬に与えます。お湯でふやかす時間を短かくしていき、固いまま食べられるように、仔犬を慣らしていきます。
- 水はいつでも飲めるように用意しておきます。ただし、こぼしたり、水の中に足を入れて体を濡らすと、風邪の原因になったりしますので、吊下げ式の給水器を使うことをお勧めします。また、水道水を直接与えないで、5分以上煮沸したお湯を冷ましたものか、ペット用飲料水を適温に調製して与えてください。
- 歯のお手入れも忘れずに。
推薦処方食
- ベッツプラン
- パピーケア
- ベッツプラン
- ジュニアケア
- ベッツプラン
- セレクトスキンケア
- パピースターター
あくまでも一般的なチョイスですが、ご不明な場合は獣医師にご相談ください。
食事を与える時の注意
- 市販の牛乳は、人用に加工・調製されています。仔犬には消化しにくく、下痢の原因となることもありますので、牛乳は仔犬には与えないでください。
- 決められた食事以外のものは与えないでください。消化不良の原因となります。
- 急に食事内容を切り替えると、食べなくなったり、消化不良を起こすことがあります。次のフードを少量ずつ混ぜながら、1週間程かけて切り替えていきます。
- 成犬時の標準体重・成長過程を基準に各期間の食事量を算出しています。
- 個体差や運動量によって、±20%程度は摂取量に差が出ます。仔犬の食欲にあわせて給与量を調整してください。
ご不明な点は、本間獣医科医院 TEL:0538-37-1139 まで
仔犬の体調不良
仔犬で一番多く見受けられる体調不良は、下痢です。健康な犬の便は、ティッシュペーパーでつまめるくらいの固さが理想です。うまくつまめない時は、下痢と考えて下さい。なぜ、下痢になったのか、原因を確かめましょう。
- 下痢以外の症状がある
- 発熱・嘔吐・目ヤニ・おなかを痛がる動物病院へ連絡を入れてアドバイスを受ける
- 下痢をしたら
- 元気があるが水様便が出るすぐに動物病院へ行く
- 普通の便に戻る・下痢が続く
- 1日様子を見る、スポーツドリンクなどを与えて脱水を起こさないように気を付けます。消化の良い食事を少しずつ与え徐々に元に戻します。どんなうんちをしたかチェックしましょう。
- タール便
- 肛門から遠い胃・十二指腸・小腸などからの出血で、血の色が変化してタール状になります。早めに受診を
- 水様便
- 水のように流れる状態。内容物が混じることがあるが、ほとんど液体状。血が混じることもある。緊急を要する
- 粘液便
- 腸内の粘液と便が混ざらずに、便に白い粘液がついている状態の便。緊急を要する
- 血便
- 便の表面に赤い血がついているもの。緊急を要する
- 泥状便
- どろりとしたカレー状の液状便。続く時は受診
- 軟便
- ティッシュペーパーでつまむと、潰れたり、床に便の跡が残るような便。続く時は受診
こんな時は要注意!!
- 水様便や粘液便・血便が数回続くとき。
- 食欲がなく、2食以上食べようとしないとき。
- 嘔吐が続くとき。
- しつこい咳が続くとき。
- 熱が高いとき。
- 下痢以外に嘔吐や発熱など複類の症状が見られるとき。
これらの異常が見受けられると、急激に悪化したり、衰弱しやすいので、すぐに動物病院で受診して下さい。
その他、ご不明な点は、本間獣医科医院 TEL:0538-37-1139 まで。
仔犬のお手入れ
- 蒸しタオルで全身をふきます。お口まわりのフードのかすや、お尻まわりの汚れをきれいにふいてあげましょう。
- ピンブラシで毛並みにそってブラッシングをします。
- スリッカーブラシで毛並みに逆らってとき、抜毛を取り除きます。
- もう一度ブラシやコームを使って、毛並みを整えます。長毛種にはコームを使います。
- シーズーやマルチーズ、ポメラニアンなどの長毛種の全身や、Mダックスフント、ゴールデンレトリバーなどの飾り毛は、コームで整えます。中毛種にはピンブラシを使います。Wコーギーや柴犬などの中毛種や、Mダックスフントやレトリバー種のボディはピンブラシで整えます。短毛種には獣毛ブラシを使います。パグやビーグル、ボストンテリア、ダルメシアンなどの短毛種は獣毛ブラシで整え、毛つやを出します。
- お手入れは、仔犬の全身をくまなく触る作業なので、身体の異常に気付くチャンスです。
- ただし初めてのお手入れが痛かったり、恐かったりした場合は、お手入れの嫌いな犬ちゃんになってしまいます。
- 初めは優しく脇や腹部なども嫌がらないように、根気よくトレーニングして下さい。
ワクチン[予防]接種
- 仔犬は母親からの初乳を通じて、母親の持つ免疫を譲り受けます。これを移行抗体と言いますが、この母親から貰った免疫は一時的なもので、仔犬の成長と共に失われていきます。
- 移行抗体が有効な期間は、仔犬それぞれによって異なりますし、更にそれぞれの病気によっても異なります。この移行抗体の効果が切れると、病気に対する抵抗力が失われるため、大変危険です。しかし、移行抗体が残っている時期にワクチンを接種しても十分な効果は得られません。そこで、確実な免疫効果を得るために、移行抗体が無くなりそうな頃を見計らって、3回ほどワクチン接種を行います。
- ワクチン接種によって得られる免疫も一生続きません。仔犬の頃のワクチン接種が終わってからは、1年毎に追加接種を行います。ワクチンの接種で予防できる病気は、感染すると命に関わる怖い病気です。こうした病気に罹る前に、ワクチンの接種で犬の体内に抗体を作っておき、この抵抗力で、万が一感染しても病気から体を守り、発症を予防したり、発症しても軽い症状で済むようにしておくことが大切です。
混合ワクチンで予防できる代表的な病気
- ジステンパージステンパーウィルス
- 感染力が強く、死亡率の高い、犬の代表的な伝染病です。空気感染と病犬に触れることで直接移る場合があります。仔犬が感染すると、発熱や食欲減退、目ヤニや膿性鼻汁から始まり、激しい咳や下痢、脱水、てんかんの様な発作や神経麻痺などを起こして衰弱死に至ります。
- アデノウィルス1型・2型(犬伝染性肝炎)
- 犬アデノウィルスには1型と2型の2タイプがあり、1型は仔犬の突然死や発熱・元気消失・食欲不振・嘔吐・下痢・扁桃腺炎・角膜白濁などの症状が現れます。
2型は肺炎や扁桃腺など呼吸器系の症状が特徴です。 - 犬パラインフルエンザ
- 犬パラインフルエンザウィルスは単独での発症よりも、犬アデノウィルス1・2型などのウィルスや細菌と混合感染し、「ケンネルコフ」と呼ばれる呼吸器系の疾患を起こします。
伝染力がとても強く、病犬との接触や空気感染で移ります。肺炎や気管支炎、激しい咳が特徴です。 - パルボウィルス感染症
- パルボウィルスによる急性伝染病で症状が重く、死亡率も高い、怖い病気です。犬の体外でも長期間生存できる、抵抗性の強いウィルスで、免疫のない仔犬が突然死する心筋型と、激しい下痢や嘔吐が特徴の腸炎型があります。
- レプトスピラ症
- 犬だけでなく人や他の動物にも感染する伝染病で、スピロヘータという細長い螺旋状の細菌が原因です。この病原菌は感染動物の尿中に排泄されるため、他の動物の排泄物に直接触れないように注意が必要です。
ワイル型・秋疫・カニコーラ型があります。 - 犬コロナウィルス症
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犬コロナウィルスが原因で、嘔吐と中・重度の水溶性下痢が主な症状です。
感染犬の便や尿中にウィルスが排泄され、経口感染します。ワクチン接種後の注意
ワクチンの接種後、まれにアレルギー反応が起きる犬ちゃんがいます。
主な症状は下記の通りなので、ワクチン接種後30分程度は、犬ちゃんの様子をよく観察し、何か異常が見受けられた場合は、すぐに動物病院へ連絡し、指示に従ってください。- 目の周囲が赤く腫れる
- 顔のむくみ
- アナフィラキシーショック(全身痙攣や意識障害)
また、上記のようなアレルギー症状ではないのですが、人の予防接種と同じように、微熱や倦怠感、食欲不振などの一過性の症状が見受けられることもあります。数日続くときは、動物病院までご相談ください。ワクチンを接種した当日は、過激な運動は控えて、安静に努めます。
狂犬病予防注射
生後91日以上の犬を飼育するには、お住まいの自治体へ犬の飼育を届け出ると共に、毎年1回の狂犬病予防注射の受診が必要です。
狂犬病とは・・・
- 法律でその予防・対策が定められている法定伝染病です。治療の手だてがないだけに、完全な予防が必要です。
- ラブドウィルスが原因で、人を含むほ乳類全般に感染します。人は狂犬病に感染している動物に咬まれることで感染しますが、致死率100%の恐ろしい病気です。
- 日本では久しく発症していないため、怖い病気という感覚が薄くなってきていますが、世界の各地で、今でも多くの人々が狂犬病で命を落としています。近隣では韓国・ネパールなどで発症が報告されており、タイでは年間2万人以上の人が命を奪われています。
- 犬好きの人は、犬を見ると、つい近づきたくなるものですが、海外に行った際は十分気を付けてください。
飼い主の義務(狂犬病予防法)
- 生後91日以上の犬が対象です
- 市町村役場への犬の登録と鑑札の交付(初年度に1回)
- 狂犬病の予防注射の受診(毎年1回)
- 市町村役場への予防注射済みの届出と注射済票の交付(毎年継続)
いずれか一つでも怠ると、20万円以下の罰金に科せられることがあります。
必ず遵守してください。
鑑札と今年度の注射済票を常に犬に携帯させる
狂犬病をはじめとするウィルスが原因の伝染病は、その予防接種を受けている頭数が多いほど、伝染病のまん延・被害の拡大を防ぐことができ、そのボーダーラインとして、WHO(世界保健機構)は75%以上の接種率を勧告しています。飼い主一人一人の協力が求められています。
その他、ご不明な点は、本間獣医科医院 TEL:0538-37-1139 まで。
フィラリア症の予防
フィラリア症とは・・・
- フィラリア症は犬の代表的疾患で、フィラリアという寄生虫が心臓・肺動脈周辺に寄生することで、循環器に重篤な障害を及ぼします。
- フィラリアの感染経路は、フィラリアの寄生している動物を蚊が吸血すると、フィラリアの幼虫が蚊の胃の中に入ります。フィラリアの幼虫は蚊の中で成長し、次に蚊が他の動物を吸血するとき、その動物の皮膚の中に浸入します。その後、皮下で3-4ヵ月間の成長後、血管に入り、心臓や肺動脈に達し、最初の感染から約6ヵ月で成虫となり、3-5年程度寄生を続けます。
- 蚊に刺されないことが最良ですが、屋内飼育の場合でも、散歩・外出時など完全な予防は困難なため、薬で予防する方法が安全で確実です。
フィラリア症予防薬
- フィラリア症予防薬は、体内に進入したフィラリア幼虫を成虫になる前に殺滅する薬です。
- 蚊が出始めたら投与を開始し、蚊を見かけなくなってから1-2ヵ月後まで、毎月1回投与します。
- 近年は、暖冬傾向にあり、蚊の出現期間が長くなっています。最後の投与を怠ったことで、次の春までにフィラリアが体内で成長して寄生してしまうことのないように、最後まで確実に予防してください。
予防期間は、お住まいの地域や環境、その年の気候によって変化します。
投薬期間については、獣医師の指導に従って、最後まで確実に予防しましょう。
外部寄生虫(ノミ・ダニ)の予防
ノミやダニ・マダニと言った犬に寄生する害虫を外部寄生虫と呼びます。
皮膚や被毛、耳などの体の表面に寄生して、痒みの原因になったり、皮膚病の原因やさまざまな病気を媒介する中間宿主になったりします。
- ノミの被害
- ノミの唾液に対するアレルギーで、激しい痒みや炎症を起こす「ノミ・アレルギー」のほか、ノミに咬まれることで強い痛みと発赤を起こす「ノミ咬症」が主な直接的被害です。動物と接触した後、蚊に刺された時よりも赤く腫れる、長く強い痛みが表れたときは、ノミが原因している場合が考えられます。
- 瓜実条虫症
- 瓜実条虫の卵を捕食したノミを飲み込んだときに、腸内に入り寄生して、消化障害を起こします。犬だけでなく人にも寄生する人畜共通疾患の一つです。ノミが媒介するので、ノミの寄生を防ぐことで、瓜実条虫の感染も予防します。
- ダニの被害
- マダニは吸血すると、小豆程度の大きさに膨らむため、この時に飼い主の方が気付くことが多いようですしかし、この時には、マダニの吸血は完了しているため、バペジア症・ライム病・ヘパトゾーン病などの病原体の伝播など、犬へのマダニの被害はすべて終わっています。マダニの寄生に気が付いてから対処するのではなく、マダニが寄生しないように予防することが大切です。
- ライム病
- マダニから人にも移る人畜共通疾患の一つです。感染動物を吸血したマダニに刺されることで感染します。輪郭の明瞭な紅斑が特徴で、発熱、全身性痙攣、起立不能、歩行異常や関節炎などの症状が、ひとつまたは複合して発症します。マダニの生息するような草むらに近づかないことと、犬にマダニが寄生しないように予防することが大切です。
予防方法
- ノミは犬の飼育環境中に生息しながら犬へ寄生・繁殖しますが、マダニは草むらなどで生息し、散歩途中の犬に寄生します。このため、普段から犬ちゃんの体を清潔にしておくことが大切ですし、ケージやベット、遊び場所など、犬ちゃんの行動範囲をまめに掃除し、定期的に消毒します。
- また、首筋に液剤を垂らすだけで、ノミやマダニが犬ちゃんに寄生したときに殺滅し、外部寄生虫の被害から守ることができます。犬ちゃんへの副作用がないため、安全で確実に予防が可能です。
その他、ご不明な点は、本間獣医科医院 TEL:0538-37-1139 まで。
腸内寄生虫
腸内寄生虫の予防
回虫・条虫をはじめとした腸内寄生虫は、犬ちゃんの小腸・大腸周辺に寄生することで本来犬ちゃんが得るはずだった栄養を横取りしながら、半年から数年に渡って寄生し、増殖していきます。
寄生虫が犬ちゃんのお腹に寄生しても、便検査で見つからなかったり、症状がなかなかあらわれない場合もあります。消化不良や下痢など症状があらわれた時には、お腹の中にはすでに寄生虫がたくさん寄生していることもあります。
- 回虫・・・サイズ:体長18cm以下、感染経路:虫卵を口から飲込んだり、母犬の胎盤や母乳から感染
- 鉤虫・・・サイズ:体長1.5cm以下、感染経路:虫の卵を口から飲込んだり、皮膚、母犬の胎盤や母乳から感染
- 鞭虫・・・サイズ:体長7cm以下、感染経路:虫の卵を口から飲み込んで感染
- 条虫・・・サイズ:最大50cm以上、感染経路:ノミ(中間宿主)などを飲み込んで感染
注意!! 腸内寄生虫は人にも移ります。
犬の腸内に寄生している虫たちは、口や皮膚から私たちにも移ります。
しかし、犬に寄生する寄生虫にとって、人の体は決して住みやすい場所ではありません。
人の体に入った寄生虫は、快適な環境を求めて体の中を動き回ったり、嚢胞(のうほう)と呼ばれる棲み家を作ったり、生命を脅かすような影響を及ぼすことがあります。
犬ちゃんだけでなく、一緒に住む家族のためにも腸内寄生虫の駆除は欠かせません。
予防方法
- 腸内寄生虫は一度駆除しても、犬ちゃんの散歩コースなど、行動エリア内で何度も再感染し、腸内へ寄生します。
- 以前は、寄生虫の種類毎に投与する駆除薬が異なるので、多くの種類の駆除薬を飲む必要がありましたが、最近は1錠で回虫・鉤虫・鞭虫・瓜実条虫など、大半の腸内寄生虫を駆除できるお薬も登場しています。
- 定期駆除で、寄生虫が腸内で増殖する前に駆除します。
予防医療で早期発見、そして犬ちゃんとともに幸せになること
予防獣医学の研究によって、多くの恐ろしい病気から犬ちゃんを予防できるようになりました。しかし、いずれの予防も毎月・毎年継続して投薬をしていかなければ、確実な効果を得ることができません。
犬ちゃんの医療においても、血液検査は健康状態や疾患を把握するための重要な要素となっています。特に、健常時の数値を把握し、その推移を把握することは、疾患の早期発見・治療にとても有効です。
犬ちゃんは、成犬時で1年に人の4-5歳分の年を取ります。半年に1回程度血液検査を含む健康診断の受診をお勧めします。
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